観光客を案内するサイネージロボット

 南紀白浜空港を運営する株式会社南紀白浜エアポート(岡田信一郎社長)は22日から、NECなど5社と連携し、南紀白浜空港でローカル5Gを活用した実証実験をスタートさせる。複合現実(MR)ゴーグルを装着した路面劣化の点検や、サイネージロボットによる空港内での目的地案内など、先端テクノロジーを使った作業やサービスの効率化をシミュレーションする。将来的には労働力不足など地方空港等が抱える課題の解決につなげたい考えだ。

 365日無休の白浜空港は、少子高齢化による労働力や熟練した労働者の技術力の確保・継続が大きな課題。加えて、空港型地方創生を目指す同空港は、紀南エリアの魅力を発信する新たな観光振興へのニーズも高い。働きがいのある業務環境を作ることと空港利用者の増加を目指し、ローカル5Gなど先端テクノロジーを活用した新たなサービスを開発しようと、実証実験することになった。

 参加しているのは白浜エアポート、NEC、THK、オリエンタルコンサルタンツ、日本マイクロソフト、凸版印刷の6社。14日には内容がメディアに公開され、ロボットによる案内、MRゴーグルを使ったスマートメンテナンスのデモンストレーションが行われた。

 ロボットによる案内は、THKのサイネージロボットとNECの複数ロボット協調制御技術を活用。2台のロボットが空港内を巡回し、観光客がレンタカーカウンターやトイレなど案内してほしい場所のパネルをタッチすると、連携して目的地まで案内するシステム。普段はデジタルサイネージによる宣伝広告が流れる仕組みで、別室にいるオペレーターにつなぐこともでき、遠隔の職員とコミュニケーションすることもできる。働き方改革でリモートワークが可能となるほか、新型コロナ感染拡大防止のための非接触対応も実現。空港職員が別の仕事をしながら対応することも可能で、作業の効率化が目指せるという。

 スマートメンテナンスは、マイクロソフトのMRゴーグルとNECの点群データ活用侵入検知技術を使い、路面損傷個所や空港の周囲3㌔に設定されている制限表面(建築物や樹木などの高さ制限)の点検・管理作業を効率化する。

 今後、MRゴーグルを使って、ペイントしたオリジナル飛行機の着陸見学を白浜空港バックヤードツアーに加える実証実験も行い、新たな観光体験につなげていく。これらすべて、ローカル5Gによって大容量、低遅延通信で実現できる技術という。

 22日から25日までの午前11時~正午、午後4~5時(最終日は午前のみ)に一般向けに公開する。

 白浜エアポート関係者は「将来的には、今後ますます深刻化していく労働力の確保という課題の解消につなげたい。白浜空港だけでなく、鉄道やサービスエリアなど同じ課題を抱える分野にも広げていければ」と話している。