厚生労働省は21日、アメリカの製薬大手ファイザー製の5~11歳向け新型コロナワクチンを特例承認した。政府は2月に小児用ワクチンを輸入し、3月には対象となる715万人への接種を始める方針にしている。

 5~11歳向けワクチンは、現在使われている12歳以上用とは別製品で、成分量を12歳以上用の3分の1に減らし、3週間間隔で2回接種する。同社の海外での臨床試験では、90%以上の発症予防効果が確認されているが、この試験はデルタ株などが主流だった昨年夏に行われたもの。今、猛威を振るっている変異株「オミクロン株」への有効性を示すデータは十分には得られていないが、オミクロン株の感染者の約75%がワクチンを2回接種した人が感染するブレイクスルー感染と言われているので、小児用のワクチンも感染の抑止力にはならないだろう。日本小児科学会は「重症化を防ぐことは期待できる」としており、感染すると重症化リスクが高くなる基礎疾患を持つ子どもには朗報と言える。しかし、オミクロン株はデルタ株に比べて重症になる確率が低く、また、もともと重症化リスクが低いとされている健康な子どもたちにワクチンを接種する必要があるのかどうかが疑問。保護者は選択に迫られ悩ましいことだろう。すでに、子どもへの接種が始まっているアメリカ、イスラエルでは全ての子どもに、ドイツは特に基礎疾患を持つ重症化リスクの高い子どもらに推奨しているという。

 国内では、オミクロン株の流行と同時に10歳未満の子どもの感染が急増し、県内でも保育園などでクラスターが発生している。ワクチンを接種するかしないかで、いじめや差別につながらないかなど、十分な注意が必要だ。

(陽)