先日、御坊市が行っている認知症になっても希望を持って暮らせるまちづくりを推進する「ごぼう総活躍のまち講座」を取材した。

 講座では、発症の原因が解明されていない認知症は予防することがむずかしいことや、現在、御坊市では、高齢者の7人に1人が認知症であることなどが説明された。そして、「認知症にならないように」というよりは「認知症になっても自分らしく暮らせるように」、認知症を正しく理解し備えることが大切と話していた。

 印象的だったのは、何度となく出てきた認知症の人本人たちの言葉。「認知症の人を守るといいながら、私たちは『当たり前』と『リスク』さえも奪われました」、「失敗しないように努力してるんやけど、失敗しても気にせんでええ地域になってほしい。だって認知症じゃない人も失敗するんやから」、「90歳を過ぎたからといって見捨てないで。90年を生きてきた私だからこそできることってあると思うの」、「昨日なに食べたかなんてどうでもいいじゃん。そんなことより今晩何食べようか考えるほうが楽しいよ」。

 御坊市は地域の介護施設などと連携してこのような認知症の人の声に耳を傾け、本人の視点に立ってこれからの暮らしを考え、認知症になっても自分らしく暮らせる地域づくりに取り組んでいる。認知症になったらそれで終わりではなく、できないことが増えていっても、できることまで取り上げられず、目標や意欲を持って生活できるようサポートしてもらえるのがとても素敵だと思った。
 高齢者だけでなく若年性認知症などもあり、誰にでも身近な問題。自分が認知症になったとき、こんなふうに接してくれる行政や施設の態勢が整っていれば心強く、頼もしい。  (陽)