広葉樹の受粉など豊かな森づくりに不可欠でありながら、近年は個体数の減少が問題となっているニホンミツバチを増やそうと、みなべ町の有志で発足した「ビーフォレスト・クラブみなべ100年の森」(下村勤会長)が1日、高城地区のみなべ100年の森で巣箱を設置するイベントを初めて開いた。国内でも例のない取り組みとして注目されており、関係者は「ニホンミツバチの楽園を作りたい」と意気込んだ。

 ニホンミツバチは日本固有のミツバチで、森の草木や農作物の受粉に大きな役割を果たしており、昔から豊かな森を作ってきたが、最近は個体数が減っているという。

 森に巣箱を設置して自然林の再生につなげようと活動しているビーフォレスト・クラブ(奈良県)の吉川浩代表が今年1月、みなべ町で開かれた環境シンポジウムで講演。これをきっかけに「ニホンミツバチは世界農業遺産に認定されているみなべ・田辺の梅システムでも重要な役割を果たしている。みなべから活動を広げていこう」と、吉川代表の取り組みに賛同した町議やみなべ川森林組合の松本貢参事、町内の養蜂家、町民有志8人で「ビーフォレスト・クラブみなべ100年の森」を結成。今回、巣箱づくりや設置を行うイベントを初めて企画した。

 会員や一般から30人が参加。みなべ100年の森はバブル期にサーキット場にしようと民間企業が山を切り開き、その後とん挫した広大な敷地を旧南部川村が買い取り、みなべ町となってから「元の森に戻そう」と森林組合等が中心となって植樹を続けている。参加者は吉川代表から説明を受けながら現地を歩き、巣箱設置場所10カ所をピックアップ。巣箱のキットを組み立て、設置していった。

 ニホンミツバチは3月中旬から5月末ごろまでが分蜂(巣別れ)の時期で、設置した巣箱に蜂が入ることが期待されている。

 みなべ町の魅力を伝える「まちキャンパスプロジェクト」(上野章代表)の一環で参加した和歌山大学観光学部2年生の横矢桐のさん(21)は「サーキット場になる予定だった場所を森にしようとする取り組みや、いままで知らなかったニホンミツバチのことを知れて意義深かった。これからも活動に関わっていきたい」と話した。吉川代表は「趣味の延長で巣箱を設置するグループはたくさんあるが、ハチミツを集めることなく、ニホンミツバチを増やし、自然に育てるこのような取り組みはおそらく日本で初めて。森を作り育てる全国のモデルケースとなる意義深いスタートだ」と期待を込めた。

 下村会長や事務局の松本参事は「ここを広葉樹が生い茂る元の姿に戻し、ニホンミツバチの楽園にしたい。これからもイベントを企画して森やニホンミツバチに親しむ機会を作っていきたい」と話した。

写真=100年の森に巣箱を設置する参加者