治安の最前線で功績を残してきた警察官を顕彰する「近畿の警察官」に、和歌山県警から唯一、田辺署地域課の高井英和警部補(54)=御坊市=が選ばれた。刑事部門15年間で培った職務質問のノウハウで、数々の事件を解決してきた「職質のプロ」。県警でただ一人の職務質問技能指導官に任命されており、地域住民の安全安心を守り、若手の育成にも力を注いでいることが認められた。

 1987年4月に警察官となり、田辺署を振り出しに和歌山西、和歌山東などで勤務。御坊署では通算8年務め、刑事として寝る間を惜しんで捜査に明け暮れた。09年に田辺署へ配属されて11年目、現在はパトカーに乗って管内を巡回している。

 「コツコツやれば結果はついてくる」をモットーに、ひたむきに事件事故に向き合ってきた努力家。男が元交際相手の女性を車内に監禁した事件では現場で指揮を執り、車の後部ドアガラスを破って女性を救出、犯人を現行犯逮捕した。御坊署時代は、覚せい剤被疑者の取り調べからけん銃密輸の情報を得て解決したこともあり、常に危険と隣り合わせの第一線で捜査に当たってきた。

 田辺署に配属された09年、それまでの実績から職務質問指導員に任命され、15年からは指導官を任されている。「広い視野で、違和感を感じることが肝心」と、パトロール中も常に風景の中に不自然がないか目を凝らす。「なぜこんなところに車が止まっているのだろう」など、少しでも気になることがあると積極的に職務質問している。ひったくり事件が連続発生した14年、非番の日にスーパーのトイレの横に止まっている1台のバイクに違和感を覚え、ナンバーを照会すると盗難車だと判明。乗っていた男を追跡したことから検挙につながり、連続ひったくり事件を解決に導いた。

 高校、大学の7年間はラグビーに明け暮れていたスポーツマン。体力には自信があり、警察官を志した。受賞には「私がこんな立派な賞をいただいていいのか」と謙遜し、「職質指導官として、若手警官が職質から犯人を検挙できるよう、しっかり指導していきたい」と表情を引き締めた。

 田辺署の楠山隆署長は「誠実で温厚、捜査経験に基づく執行力は非常に高く、若手の模範。今回の受賞は田辺署の誇りで、敬意を表するとともに美緒夫人の内助の功もたたえたい」と話した。

写真=近畿の警察官に選ばれた高井警部補