みなべ町の納棺師杉本雅信さん(21)が、納棺式に重点を置いた葬祭事業の展開に向け、近く個人事務所「SHION(シオン)」を立ち上げる。葬儀準備に追われて故人と向き合う時間が少ないケースが多いなか、家族が故人と一緒にいる時間を大切にしてもらう葬祭の形を提案していく考えだ。

 杉本さんは南部高校を卒業後、東京観光専門学校葬祭ディレクター学科で葬祭ディレクター資格を取得。「大切なのは故人を守ること」と、葬儀の担当者ではなく納棺師の道を選び、東京の遺体安置所と貸葬祭場事業を展開する「あなたを忘れない㈱」に就職。故人と向き合い、着せ替え、メイク、清拭などを勉強。顔に跡形がついてしまう顎(あご)バンドをしないで口を閉じる技術、家族や友人が安全に故人に触れることができるよう止血や消毒など体の処置の仕方、専用クリームでの全身保湿、洗髪、室温管理など納棺師としての「ファイナルトリートメント」の技術を磨いてきた。

 現在も大阪で質の高い処置について学んでいるほか、京都グリーフケア協会の講習を受講して、グリーフ(悲嘆・悲しみ)を和らげるための接し方なども勉強中。グリーフケアサポーター認定資格の取得を目指して日々精進している。

 亡くなってから通夜まで、葬儀場での打ち合わせや親類等への連絡など忙しく、納棺式も簡略されることが多い現状から、「もっと家族が故人と向き合える時間を大切にしたい」との思いを強くし、納棺師として新たに事業展開していくことを計画した。

 「通夜の準備に追われるなか、唯一故人と向き合える時間が、『納棺式』だと考えています。そういう時間を大切にする葬祭を提供していきたい。紀南には納棺師がいないので、知識と技術と経験を生かし、一人一人に合ったその人らしい葬儀をサポートしていきたい」と話している。

写真=新たな形の葬祭事業を提案する納棺師の杉本さん