ちょっとシーズンを過ぎてしまったが、ホタルが近年めっきりと少なくなってしまった。30年ほど前にはどこにでも飛び交い、決して珍しいという光景ではなく幻想的な輝きを至るところで放っていた。川の近くはもちろん、時には家の中まで入り込んで来るほどだった。しかし、近年ではその姿が特別視されるようになっている。

 田辺市龍神村でも2011年に発生した紀伊半島水害で激減したという。観光で訪れた宿泊客らから「以前見られたホタルはいなくなったの?」などという声があり、地元の旅館関係者6軒で結成する「龍神お宿の会」が復活に向けて立ち上がった。14年から本格的に取り組みを始め、人工の養殖池を設置。3年ほど前から成果が表れ、昨年から小家地内で観賞会が開かれている。ことしも、小雨が降るあいにくの天候となったが大勢が来場し、「こんなに近くで幻想的な乱舞を見るのは久しぶり」と昔を思い出しながら楽しんだ。

 龍神村は観光が産業の大きな柱。その意味では、まず人が集まらないことには地域の活性化にはつながらない。日本三美人湯の温泉、自然豊かな日高川などが有名だが、ホタルも観光資源となり得る時代。温泉につかりながら日高川周辺で幻想的な風景が見られればインパクトも強い。

 今回、龍神で開催されたホタル祭りの主催は「ホタルとともに光かがやく龍神村実行委員会」(切林英治会長)。切林会長は「最初は復活だけを考えていたが、いまは地域おこしになればと思う」と話す。ホタルが飛び交う光景は大きな財産。日本を訪れる海外からの観光客も増えているなか、外国人を呼び込む材料としても使える。小さな山里の輝きが世界で注目される。そういうこともあるかもしれない。(雄)