厚生労働省の事業で地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターが取り組んでいる、認知症と診断された直後に役立つ「本人ガイド」の作成チームに、御坊市介護福祉課の谷口泰之副主任(39)が参加している。認知症の診断から早期支援につなげる初めてのマニュアルで、本年度中に作成し、来年度には全国の自治体に配布する大きな事業。谷口さんは「希望の持てるガイドにしたい」と張り切っている。
 厚労省の本年度老人保健事業推進費補助金を活用して同センターが取り組んでいる「認知症診断直後等における認知症の人の視点を重視した支援体制構築推進のための調査研究事業」の一環。認知症と診断されてから支援を受けるまでの手引きがないことから、初めて本人ガイドを作成することになった。
 ガイドは、診断直後のダメージを和らげ、これからの暮らしに希望を持つことができるよう、相談できる機関やどこに行けば同じ病気を持つ人と出会えるかなどを示すことにしている。作成メンバーは12人。厚労省や認知症支援に取り組む機関の代表、認知症支援では全国トップといわれる福岡県大牟田市の団体代表らそうそうたる顔ぶれに加え、都道府県の中でこれから認知症支援施策が充実していくと予想される和歌山県と福島県の市町職員が加わることになり、和歌山からは全国先進地の御坊市と広川町が参加している。すでに東京で2回の会議が開かれ、ガイドに盛り込むべきメッセージやどのタイミングで本人に手渡すのが望ましいか、どのように地域で活用していくかなど活発に議論している。谷口副主任は認知症本人の思いを尊重し、本当に望む支援のあり方を勉強、実践してきたこれまでの経験を生かして「本人の言葉をダイレクトに伝えることを心がけています」と積極的に意見しているという。
 谷口副主任は「すごいところに参加させてもらい、光栄なこと。とても勉強になります」といい刺激を受けており、「認知症の早期診断直後や初期段階の本人が、必要とする相談や支援につながっていない『空白の期間』がこれまで問題になっていた。ガイドは空白の期間を解消し、認知症になっても希望の持てる内容になるよう自分の役割を果たしたい」と意欲を示している。