和歌山県も舞台となったことしのNHK大河ドラマ「真田丸」。平均視聴率も高く、好評を博した。12年前の初大河「新選組!」では視聴率的に振るわなかった脚本の三谷幸喜氏だが、今回は雪辱を果たした形だ
 「日の本一の兵(つわもの)」と称えられた真田幸村(ドラマでは信繁)の物語を、史実を大切にしながら面白く見せる。有名な逸話は外さず視聴者サービス満点。それでいて現代風のセリフ回しなど批判を受けそうな演出も果敢にやってのけ、実際批判が出ても方針をひるがえさず貫き通し、内容の面白さで納得させる。三谷氏の本領発揮といっていい作だった
 この幸村はともかく諦めない。「滅びの美学」などとは無縁。冷静に、しかし熱く頭脳をフル回転させ、豊臣家の存続へなんとか徳川と妥協できる着地点を現実的に考え、その方向でなるべく確実な対応策を打ち出していく。大坂方の敗北は知っているのに、見ていてこれならうまくいくのではなどと錯覚しそうになる。その策がことごとく、ほかならぬ大坂方の上層部の横槍で崩されても自棄を起こさず、状況の変化に即対応して次の策をひねり出す。ドラマながら頭が下がる。面子にこだわる古い型の武将ではなく、現実的に活路を見いだそうとする姿に、現代に通じるヒーロー像を見た
 兄の信之は真田家を継ぎ、松代藩主となる。その藩は幕末に徳川幕府を揺るがすこととなる兵学者佐久間象山を輩出する、との解説でドラマは終わった。佐久間象山の名で12年前の「新選組!」とつながる。第1回に石坂浩二の配役で登場していた人物である
 独自の方法を貫き、見る者の心をつかむ演出をも巧みに取り入れて現実の成功を導く。そのやり方に「日の本一の兵」が重なる気がした。(里)