震度7の最初の揺れを乗り越え、被災地ではみな、「なんとか命は助かった」と思ったはず。その28時間後、はるかに規模の大きな地震が起こり、一気に数十人が犠牲となった。一連の熊本の地震災害。相次ぐ揺れはだれもが「余震」と思い、あとから「本震」がくるとは専門家でさえ予想外の事態。あらためて、震災は何が起こるか「わからない」ことがよくわかった。
 熊本県内では12万人近くが避難所生活を送り、現在も3万世帯以上、7万人以上に避難指示・勧告が出されている。避難所や自宅の外では車の中で寝起きしている人も少なくなく、心配されていたエコノミークラス症候群による犠牲者も出てしまった。
 狭い車内で足を伸ばせず、窮屈な姿勢は熟睡できない。結果、疲れはとれずストレスがたまるが、プライバシーのない屋内の雑魚寝よりは、車の中の方が他人に気を使わないだけ精神的に楽ということなのだろう。1日、2日ならともかく、車中泊が長引くにつれ病気のリスクも高まる。
 今回の熊本でも、被災者は炊き出しや物資の配給に黙って並び、割り込みによる喧嘩も起こらない。相手の気持ちを思いやり、困ったときには互いに助け合う日本人の気質はまぎれもなく世界一の民族性であるが、長期化する避難生活では自らの心身を痛めてしまうこともある。多少の迷惑はお互いさま。まずは十分な睡眠がとれる環境を確保したい。
 『日本沈没』の田所博士は、「単なる過去の歴史の延長によって、類推できない未知の暗黒もある」という。現実にテレビで繰り返される活断層云々の専門家の話も、つまるところは「わからない」。私たち和歌山県民も熊本の余震の収束を祈りつつ、自らの備えの再確認を。(静)