御坊市内、坂本ミチエさん宅の桜を取材させて頂いた。ベランダの鉢植えで挿し木から育てた、背丈ほどのかわいらしい桜だ。サクランボのなる種類で、調べたところセイヨウミザクラのようだった
桜もさることながら、印象に残ったのは坂本さんの元気そうなご様子。御年94歳にして歌と踊りの会の代表を務め、高齢者施設訪問を続けている。ゆっくり言葉を交わしたのは10年前に坂本さんの著書発刊を取材して以来だが、瞳の生き生きしていることはその時と変わりない。ベランダの桜や草花を世話するため、幾分急な階段を毎日上り下りしているという
 取材や投稿原稿掲載の打ち合わせなど、90歳代の方とお話する機会がたびたびある。こちらが圧倒されるほど元気で、矍鑠(かくしゃく)として世界史の講義などして下さる。本紙の連載コラム「食生活のおたすけマン・エツタロウがゆく」の管理栄養士、滝川悦子さんのご父君も、コラムにもたびたび登場するが、95歳。先日お目にかかってごあいさつさせて頂いた。やはり生き生きとお元気そうであった
 仕事柄、幼児から90代までいろんな年代の人に会うが、一つのことに打ち込んでいる人、社会の行く末に関心を持っている人は皆、実年齢にかかわらず青年のようなまなざしや声の張りを持っておられる。記者になって間もない頃にきいた、「80歳の時は80歳の俳句をつくっていたが、90歳になるとまた違うものが見えてきて90歳の俳句をつくることができる」と、当時90歳だった俳句愛好家の方が語った言葉はずっと心に残っている
 丙午生まれの筆者らの学年は4月以降50代に突入していくが、先達の皆さんの心強い姿を見ていると、勇気をもって年を重ねていける気がする。(里)