由良町の畑中雅央町長は、11日に再開した議会一般質問の中で、県が津波対策で総額50億円を投入して進めている由良港湾内の防波堤建設事業について、「地元漁協など関係者から建設におおむね合意が得られた」と報告した。今後、漁業補償の調整なども残っているが、事業推進に向けて大きな前進。日高振興局では「早ければ28年度中にも着工できれば」と話している。
 馬場博文議員が「由良港湾の津波対策は、その後どうなっているのか」と質問したことに対する答弁で、畑中町長は「着工に向けて関係漁港と調整してきたが、日高町側での合意がおおむね得られ、由良町側ともども調整がほぼ完了。今後、漁業補償の話も終結すると期待している。町としても一日も早く着工できるよう要請し、県のバックアップをしていきたい」と述べた。
 現在、由良港湾の周辺は、由良町側が網代、里、阿戸、江ノ駒、神谷、日高町側が柏地区となっており、民家密集地や海上自衛隊の基地のほか、MES―KHI由良ドック㈱、㈱駒井ハルテック和歌山工場などの企業もある。巨大地震に伴う津波の被害が懸念される地域で、由良町などが22年度、県に対して津波対策を要望していた。これを受けて県は24年度に由良港湾施設整備として津波対策を事業化。計画によると、神谷の駒井ハルテック側から延長350㍍、高さ6・5㍍、柏地区の通称「ムロノキ鼻」側から延長100㍍、高さ5・5㍍の防波堤を整備。2カ所の防波堤の間は、約450㍍の距離を開けており、大型船舶などの航路として安全性を確保する。津波が発生した場合、この地点での津波高は4・8㍍(東海・東南海・南海の3連動)を想定。2カ所の防波堤の間にある航路から津波が侵入するため、完全にブロックできるわけではないが、津波の侵入や勢いの抑制で、港湾周辺地域への被害軽減につながると期待されている。
 県は事業化した24年度に約6000万円で現地測量と調査ボーリングを実施。25年度は5300万円で基本設計を行った。26年度は2億5000万円を計上して着工する予定だったが、漁業者から「漁業への影響はどうなるのか」などの不安の声があったことで、一層慎重に進めるために着工を見送った。予算は本年度に繰り越し、引き続き関係する由良町漁協、紀州・日高漁協由良浦支所、比井崎漁協、地元企業などへの事業説明を行っていた。
 日高振興局では「地元関係者からは『住民の命を守るための事業』ということで理解をいただいた。漁業補償の問題もあるが、28年度も工事用の予算は計上する方針で、早期に着工できるよう努力したい」と話している。完成は平成34年度ごろを目標にしている。