幼児の頃、金管楽器系の音が苦手だった。鳥肌が立って落ち着いてものが考えられない。単に苦手というより、おそらく体質的な問題だったと思う
幸い成長と同時に神経が太くなったのか、年齢が上がるに連れて治まり、中学生の頃には吹奏楽部の演奏を楽しめるように。成人すると完全に大丈夫になり、どの音楽も心から楽しんで取材できることに感謝している。特に強くそう思わせてくれたのが、先日の第23回御坊市民吹奏楽団定期演奏会だった
20年前から毎週1回、早起きして御坊へ指導に通っているという指揮の西垣誠一郎さん(枚方市)。アンコール前のあいさつで「最初は1年だけのつもりだったのですが、お聴きになって分かる通り......うまいことないですか?」とメンバー達を示し客席に問いかけると、力いっぱいの拍手が返ってきた
素人なので「うまい」かどうかは分からないが、最初から「はっ」として座り直すほど魅きつけられた。大人数の吹奏楽演奏の魅力を存分に味わわせてくれる、堂々としたリード作曲「小組曲」、軽快なリズムのスッペ作曲「スペードの女王」序曲、そして雅楽の世界を鮮やかに吹奏楽で表現した「舞楽Ⅱ」。気合の入った聴き応えのある第1部だった。第2部は楽しくフットワークの軽い感じで、観客サービス満点の選曲。しかし確かな音の重なりと力強さ、心躍らせてくれる響きは1部と同じ。聴く人に楽しんでもらおうという意図、吹奏楽という音楽が秘めている多彩な魅力を知ってもらおうという意図、どちらも見事に成功したプログラムだったと思う
全編通して、音の力に感動させてもらったひととき。体質も変わって成長できたことに、あらためてしみじみ感謝したいと思わせてくれたコンサートでもあった。(里)