由良町門前の臨済宗鷲峰山興国寺(山川宗玄住職)で11日、成人の日恒例の天狗まつりが行われ、〝神通力〟にあやかろうと町内外から多くの参拝者らが訪れた。メーンの「天狗の舞」では大天狗が羽うちわを勇壮に振りかざし、烏天狗や小天狗がリズミカルな踊りを奉納するなど、かつて寺のお堂を一夜にして建て直したとされる伝説を再現した。
 最初に虚無僧や僧侶、大天狗、稚児らが行列をつくって本堂上の天狗堂までいき、降魔大祈願のお経を読んで、開運厄除、家内安全、入試合格、交通安全、商売繁盛を祈った。再び行列で、境内から階段を下りて参道横の特設舞台まで移動し、天狗の舞を奉納。大天狗がゆっくりとした動きで羽うちわをあおぎ、両手を大きく広げるなどのポーズで神通力を振りまいていた。のこぎりや槌など大工道具を手にした烏天狗や小天狗らは、太鼓と鉦の音に合わせて片足を上げたり、飛び跳ねたり小気味よい踊りを披露。見物人からは大きな拍手が送られた。舞台前には多くのアマチュアカメラマンも詰め掛け、しきりにシャッターを切っていた。
 興国寺の前身は西方寺で、鎌倉幕府三代将軍源実朝の菩提を弔うために安貞元年(1227)に建立。興国寺となったのは興国元年(1334)の後村上天皇のころからとされている。その昔、火事で再建に困っていた同寺の伽藍(がらん)を赤城山の大天狗が一夜にして建立したという伝説も残っており、天狗に感謝するとともに、伝説を後世に伝えていこうと、天狗まつりは昭和55年から催されている。