国道を走っていると、海を一望できる場所で他府県ナンバーの車が止まり紀伊水道の水平線をバックに記念撮影する姿を以前からよく見かける。地元で生まれ育った人には当たり前の風景も、都会の人からみれば「すごい」景色。日常生活に溶け込んでいる観光資源に気づくのは難しいが、他人から見ればそれが魅力というものは案外多い。景色や観光スポットだけでなく、食や土産物もそう。キーワードは「その土地ならでは」だろう。
 先日、観光地としてアピールしている御坊の寺内町で明るい話題が二つあった。一つは「寺内町御膳」と名付けた御坊伝統の食を集めた料理が、他府県から多くの参加者があった放送大学のフィールドワークで振る舞われたこと。早なれ寿司や茶がゆ、径山寺味噌など御坊ならではの味がぎっしりで、味もさることながら「ここにしかない」という観光には欠かせない要素が詰まっていたのが好評だった要因だろう。
 もう一つの話題は、寺内町に新しい土産物店「御坊天神堂」がオープンしたこと。節句の贈り物として親しまれていた御坊人形をもとに製作されたオリジナルの天神人形のほか、お茶やまんじゅう、梅干しなどを扱っており、こちらも「御坊だからこそ」の商品をそろえているところが大きな魅力。オープン初日から大勢の人でにぎわったのもうなずける。
 寺内町御膳と御坊天神堂、ジャンルは違うが、少しでも観光客に喜んでもらいたい、御坊のよさをアピールしたいという発案者の思いは同じ。このおもてなしの気持ちこそが観光振興の第一歩で、まちの活性化のスタートラインであろう。「いっちょやったろか」の気持ちが町を元気にするのだ。     (片)