9月にみなべ町から串本町までの海域が吉野熊野(よしくま)国立公園に編入されたことを受け、環境省近畿地方環境事務所は8日、田辺市のスポーツパークで大規模拡張・海域公園地区指定記念式典を行った。同省の奥主喜美自然環境局長は「海の魅力を再認識してもらいたい」とあいさつしたあと、関係者が梅ジュースの鏡開きで祝った。
 式典には約200人が参加。オープニングとして秋津川炭琴サークルが演奏を披露し、澄んだ音色を響かせた。奥主自然環境局長は「40年ぶりに海域が拡張された。海、山、川がそろった自然公園を多くの人に楽しんでほしい」とあいさつし、仁坂知事や田辺市の真砂充敏市長らも「国定公園内に生息するオオカワリギンチャクは天然記念物に指定となった。みなべのきれいな自然が国立公園になり、うれしく思う」などと述べた。続いて近畿地方環境事務所の秀田智彦所長が概要を説明し、世界最北のテーブルサンゴ群集の生息やきれいな紀南地方の海岸などについて紹介。みなべ町の提供した樽入り梅ジュースで鏡開きを行い、同町の小谷芳正町長の発声で木槌を振り下ろして祝った。
 このあと、京都大学名誉教授で舞根森里海研究所長の田中克氏を講師に迎えて記念講演が行われ、「森里海連環の世界を拓く~いのちのふるさと海と生きる~」をテーマに語った。「国立公園を活かした地域振興について」をテーマにするトークセッションでは、天神崎の自然を大切にする会理事の玉井済夫氏、自然体験学習支援センター理事の中家勝之氏、ネイチャーフォトグラファーの内山りゅう氏、熊野自然保護連絡協議会会長の南敏行氏、環境省田辺自然保護官の岩野公美氏の5人がパネラー。玉井氏は41年間にわたって行ってきた天神崎の保護活動を紹介し、「活動を始めた当時は、まさか国立公園に指定されるとは思わなかった」などと振り返った。