県の平成28年度新政策に関する仁坂吉伸知事ら県幹部と紀南地方市町村長との懇談会が27日、田辺市役所で開かれた。県は▽安定した雇用の創出▽県への新しい「人の流れ」の創造――など5つの基本目標に沿って、それぞれ主な事業の取り組みを説明。印南町の日裏勝己町長は柔軟な農地転用規制、日高町の松本秀司町長は農業振興に関して、新たなブランド米の開発を要望した。
 県は「安定した雇用を創出する」という基本目標の中で、農林水産業の競争力を強化する政策の一つとして、農地の転用を抑制する方針を掲げた。印南町の日裏町長は「津波浸水想定エリアの高台への避難を考えると、そこの農地を転用できなければ話が進まない。優良な農地を守っていくことも大切だが、そこをうまく切り分け、農地として残す方がいいのか、宅地にする方がいいのかを考えてもらえないか」と柔軟な対応を要望。
 これに対し、仁坂知事は和歌山市の市街地が広がった結果、地価の下落が深刻な問題となっていることを説明し、高台の農地については「町と県が相談しながら町に決めてもらう。とくに紀南は避難困難地域解消のため、高台移転が切り札になるので、和歌山市とは違う」とした。さらに、開発にはインフラ整備で財政負担が増すことも含め、「まちの百年の計のために、住民を説得して決めておくことも大事」などと答えた。
 日高町の松本町長は同じく農林水産業の競争力強化に関し、出張で訪れた青森県で同県が10年かけて開発した新ブランド米「青天の霹靂」が食味試験結果で最優秀の「特A」を獲得し、知事が胸を張って振る舞ってくれたと報告。「日高町も米農家が多く、和歌山県も同じように新ブランド米の開発に力を入れてほしい」と要望した。
 仁坂知事は「和歌山県も3年前から農業試験場の研究費を倍増し、農家の要望と試験場のやりたいことをくっつけて、研究を進めるようにしている。その点で、松本町長がいわれた米のブランド開発も十分な要望。どんどん注文してもらいたい」と、前向きな姿勢を示した。