毎週金曜日深夜にテレビ朝日で放送されているドラマ、「民王(たみおう)」が面白い(18日、第8回が最終話)。現職総理大臣と、大学生の半ば引きこもりの子どもが、何者かの陰謀? で心と体が入れ替わってしまうという奇想天外なストーリー。ちょっと難しい漢字になるとルビを打たなければ読めないような息子が首相に、政治の権力闘争を勝ち抜いて総理のいすを手に入れた父が冴えない大学生になり、数々の困難に直面する。心と体の入
れ替わりが起こるドラマは新しいアイデアでもないが、父親役の遠藤憲一、息子役の菅田将暉がともにはまり役で好演。とくに、こわもて遠藤憲一の、本当に頼りない息子と入れ替わったかのようなコミカルな演技が、より楽しくさせている。
 「半沢直樹」で知られるベストセラー作家・池井戸潤氏の作品をドラマ化。総理になった息子、大学生になった父親の2人は、レアメタルの輸入交渉、官房長官のスキャンダル、シングルマザーの就労、資金難のフリースクールなど、政権を揺るがしかねない問題を次々と乗り越えていく。父親は総理を志した若かりしころの思いを取り戻しながら、息子は中高年にはない若者の視点で困難に立ち向かう姿が見られる。
 突然の入れ替わりという発想で繰り広げられる政治小説。「政治的信条は一切ありません」という作者が伝えたいことの一つには「相手を理解する心」の大切さがあると思う。突然の入れ替わりを使い、それを表現しているのではないだろうか。
 現実世界。政界の権力者、また社会的に上の立場の人は、入れ替わらずとも思いやりの心を持てないようではその地位にいる資格はないだろうと考えさせられる。 (賀)