書道の青峰会の小作品展を取材した。作品1点1点に短い解説が添えられており、大変勉強になる。田嶋良通会長の作に坂村真民の詩「二度とない人生だから」の一節があった。不勉強で作者のことはよく知らなかったが、「念ずれば花ひらく」の言葉で知られる仏教詩人であった
 田嶋会長は四国へ旅行した時、愛媛県砥部町で坂村真民記念館に立ち寄り、感銘を受けたという。真民は熊本県出身だが、良質な砥石の産する砥部町に「自分自身を磨きたい」と移り住んだそうだ。それを聞いて「面白い人だ」と興味を惹かれ、ネットで調べてみた
 「念ずれば花ひらく」は全国至る所、どころか海外を含む730カ所にその言葉を記した碑があるそうだ。この言葉がなぜ、それほど人を魅きつけるのか。願いをかなえることは「結実」と表現されるが、「念ずれば実を結ぶ」ではそこまで人の心をとらえなかったような気がする
 「花ひらく」。その言葉を耳にすると、可憐なつぼみがほころび咲いていく映像が心に浮かぶ。その美しいイメージは、人の思いという目には見えないが精妙な力の表現にふさわしい。「実」では重たすぎて、本当にできるという実感がないのかもしれない。「人の強い思いには花をも咲かせる力がある」というこの言葉は、人に勇気を与える。それを大事に世話して、つまり念を行動に移して初めて花は実になるのだが、そこまで理屈っぽくいう必要はないのだろう
 「二度とない人生だからつゆくさのつゆにもめぐりあいのふしぎを思い足をとどめてみつめてゆこう」田嶋会長の書では、この一節が書かれていた。詩人の言葉はまた、筆遣いや墨の色で書としての新たな力を持つ。人の手によって生まれた作品は、すべて心を形にした花のように思える。  (里)