先日、御坊中央ライオンズクラブ(蕨野敏博会長)の結成35周年記念事業の取材で、全国で最も高い34㍍の津波が想定された高知県黒潮町の大西勝也町長(44)の講演を聴いた。黒潮町では、津波が来た際、一般的な防災意識で計算すれば2300人の死者が出ると想定されているが、住民がすぐに避難行動に出れば死者数を大幅に減らせるということから、「逃げる人づくり」を中心に話した。
 その中でも印象的だったのが、「避難するかどうかは防災意識の高い低いという簡単な言葉では表すことができない、根本的な課題がある」ということ。例に挙げたのは宮城沖地震での気仙沼市の人の反応。気仙沼では12分後に津波が来ないことが知らされたが、その間、机に隠れるなどの避難活動をとったのは8.1%、津波が来ると思って高台に逃げたのは1・7%だった。東北は過去を振り返ると高知などより短い期間で大地震が起こっており、防災意識や教育についてはむしろ高いと言える。にも関わらず、ほとんどの人が避難をせず、テレビで状況を見守った程度。「これでは避難タワーや避難路があっても助からない」と指摘していた。
 つまり防災意識が高くても、即時避難につながらないということだ。原因の一つが情報依存。避難の前にまず情報を得ようとテレビにかぶりつき、その情報によって判断するため、行動が遅れる。情報化により災害情報がいち早く入手できるようになったが、皮肉にもそのことが避難を遅らせる原因にもなっているという。「地震が来たら高台へ逃げる」。この当たり前のことを迷わず行動できる人づくり。それこそが防災の第一歩なのだろう。 (城)