和歌山県を修学旅行先に選ぶ県外の学校が、この10年間で約10倍になったという。熊野古道歩きや体験型観光などをPRしている成果の表れだろう。日高地方でもみなべ町は小中学校の誘致に積極的で、順調に増えている。梅の収穫や加工、魚の干物づくり体験、千里ヶ浜でのウミガメの産卵見学など、「ここでしかできない」体験がウケている。京都から来た修学旅行生に取材で話を聞いたときも、「普段はできないことが体験できるので楽しい」と笑顔で話していたのが印象に残る。田舎に住む筆者らにとっては当たり前の風景、風習も都会の人にとっては魅力なのだろう。
 日本を訪れる外国人観光客も増えている。テレビで特集していたが、最近は観光地を巡るのではなく、一般住民の家に寝泊まりして、普通の日本人の暮らし、習わしを学ぶ人が増えているのだという。東京スカイツリーや京都の神社仏閣など大きな観光スポットだけでなく、日本人の生活スタイルそのものが観光資源。靴を脱いで家に上がる、これだけでも外国人にとっては日本を感じる魅力の一つなのだろう。
 観光資源に乏しい和歌山県、とくに日高地方で観光客がたくさん訪れるといえば道成寺ぐらいしか思い当たらない。そんな中でも印南町の有志が行っている民泊は好評で、日高川町をはじめ田舎暮らしも人気があるように、田舎ならではの魅力に磨きをかけていくことが観光や地域振興の近道ではないだろうか。人口減少に歯止めがかからないいま、交流人口を増やしていくことは重要な課題。田舎の自然を生かした体験プログラムはもちろん、温かい心、人との交流こそが田舎の魅力であろう。気取らず、田舎力をもっと磨いていこう。
       (片)