御坊ライオンズクラブ主催、日高地方子ども暗唱大会も4回目。いろんな詩や文章に出会えるのが楽しみで、毎回全部傾聴している
 
 中学群読奨励賞、湯川中2年の「早口ことばのうた」では、「そうだ村の村長さん」が面白かった。子どもの頃きいた覚えのある「ソーダ村のソーダさんがソーダ飲んで死んだそうだ」の原典が、童謡「さっちゃん」などの作詞で知られる詩人阪田寛夫の作品とはまったく知らなかった。しかもこのそうだ村の村長さんは実は死んでおらず、クリームソーダの温泉が作りたいとみんなと相談する愉快な村長さんであった
 笑いを誘う発表、胸を熱くする発表。まっすぐに前を見すえ、会場の後ろまで響きわたる声での凛とした発表。首をかしげかしげ宙に目をやり、胸の奥からしぼり出すように言葉を思い出しながらのほほえましい発表。それぞれにたくまずして個性が出る。自分で黙読する詩や文とは違い、一字一字が省略されずにすべてはっきりと心に届く。著者の思いを観客に間違いなく届けようとするように。そしてそこには、表現者の感動も乗せられる
 その日の朝、「イスラム国」によるジャーナリストの後藤健二さん殺害が報道された。それがずっと頭のどこかにあったためか、早蘇中1年の発表、谷川俊太郎の詩「くり返す」での「人の命をくり返すことはできない/けれどくり返さなければならない/人の命は大事だとくり返さねばならない/命はくり返せないとくり返さねばならない」の叫ぶような声は、殊に胸に響いた
 言葉とは「人の心を動かす」という、場合によっては何よりも強く働く力を持つものである。若くすがすがしい声の暗唱をきくたび、そのことを実感する。     (里)