暑い夏、一日の終わりにひとっ風呂、サウナにも入ってさっぱりしたあと、エアコンの効いた脱衣場で扇風機の風を受ける。かぐや姫の『神田川』ではないが、洗い髪も芯まで冷えて心地よく、「このまま朝まで寝てしまいたい」と何度願ったことか。日本の伝統文化のまちの銭湯が年々減っており、あと20年もすれば絶滅してしまうペースで姿を消しつつあるという。
 20年以上前、当時住んでいた大阪市の西区には、アパートからすぐのところに3つも4つも銭湯があった。その後、大阪ドーム(現京セラドーム大阪)など大規模な再開発が進み、2年ほど前に訪ねたときには、迷子になるほど街の景色が変わり、毎日通った風呂屋もなくなっていた。都市の再開発、経営者に寄る年波、さらに燃料費の高騰から廃業が相次いでいる。
 入り口が男湯、女湯に分かれ、番台がある昔ながらの銭湯にかわり、人気を集めているのがスーパー銭湯。御坊にもあるが、ジャグジーや岩盤浴、サウナなどさまざまな風呂があり、食事コーナー、あかすり、マッサージなどのオプションもうれしい。
 どんなに風呂が気持ちよくても、どれほど食事がおいしくても、他の客のマナーの悪さで気分を害することも少なくない。男湯では、サウナのあとの水風呂に、汗をかいたままの体でつかる人が多い(マジで)。どこの銭湯にも「水風呂は必ず汗を流してから入って」と注意書きがあるが、カンケーなし。「うぁあああ」といううなり声のようなでかいため息とともに、カバのように頭までつかる人もいる。
 互いに丸裸の銭湯、つい自分の家のような感覚になってしまうのだろうが、公共の場にはルールがある。マナーを忘れず、気持ちよく利用しながら、まちの銭湯を守っていきたい。    (静)