県はイノシシやシカの野生獣肉「ジビエ」の消費拡大を目指し、全国で初めてとなる肉質の格付け制度をスタートさせた。狩猟者が捕獲するイノシシとシカの肉はほとんどが仲間内で配られており、一般消費者に流通していない現状を打開するため、獣肉処理施設の衛生管理認証と合わせての新システム。肉質は皮下脂肪の厚さなどを基準に、イノシシは3等級、シカは2等級に分けて格付けされる。
 平成24年度、県内で捕獲されたイノシシは約1万4000頭、シカは約9400頭。22日現在、県内には日高川町の「ジビエ工房紀州」など17の獣肉処理施設があるが、24年度中に処理施設に持ち込まれて販売されたのはイノシシが440頭、シカが217頭とわずか3%弱にとどまっている。ほとんどは狩猟者がイノシシやシカを捕獲しても、食用に適さなかったり、狩猟者が自らさばいた肉を仲間内で分け合っており、県は一般消費者にもより安全で高品質な肉を届けるため、処理施設の衛生管理認証制度とジビエの肉質格付け制度をスタートさせた。
 処理施設衛生管理認証の対象は、ジビエ工房紀州など食品営業許可を受けた県内の処理業者で、衛生管理ガイドラインの順守、捕獲から流通、消費、廃棄までのトレーサビリティシステムの導入などを基準に、3年間有効の認証を交付する。肉質の格付けは県の講習会に参加、適合審査に合格した人が格付員となり、皮下脂肪の厚さや肉の締まり、きめ、肉と脂肪の色などを基準にランクを判定。イノシシはA・B・Cの3等級、シカはA・Bの2等級に分けて格付けされる。
 県畜産課によると、今月7日の制度スタートからこれまでのところ、施設、格付員ともに認証の申請はなし。仁坂吉伸知事は「ジビエの消費拡大のため、捕獲、解体、流通、消費の流れのうち、流通の部分をテコ入れするのが今回の制度。衛生管理認証を受けた施設で処理された高品質の肉を提供しながら、格付けで大丈夫と認められた肉は学校給食にも使えるよう努力していきたい」と話している。