原発立地反対運動などをテーマにした長編ドキュメンタリー映画「シロウオ」の日高町に関係する後半部分を鑑賞させてもらった。「原発立地反対の立役者」となった漁業者の豊かな自然とともに生き生きと生活する姿などが強く印象に残り、東京電力福島第一原発事故から端を発した原発問題について改めて考えさせられた。
 製作・脚本を務めた矢間秀次郎さんが問う「本当の豊かさ、真の幸せとは何か」というのは、原発に限らず難しい問題だ。たくさんお金が欲しい、会社で出世したい、家族と穏やかに暮らしたい、人のために仕事をして人から喜ばれたい、お金はそんなにいらないので自分の趣味など好きなことをやっていきたい等々。豊かさ、幸せを感じる瞬間は十人十色、人それぞれであり、それに「本当の」「真の」とつくと自分自身のことでも「どれが正解」か判断を下すのには時間がかかる。個人的には他人に押しつけられて決める、そのレールの上を走らされるようなものではなく、自分自身の思いを整理し、素直にそれをしっかりと持って人生を歩んでいければ何よりと考える。
 原発問題では、推進して経済的に豊かになるのが幸せ、電気を思う存分使って気持ちよく生活するのが幸せ。逆に、ある程度の我慢は強いられても「海さえあれば生きられる」といって自然とともに過ごすのが幸せと感じる人もいる。政治、マスコミなどでは原発賛成、反対の立場が鮮明になりつつある。一般市民はより多くの情報を取り入れ、自らの「本当の豊かさ、真の幸せ」を考えなければならない時期に差しかかっていると思う。前出の映画も自分の思いを決めるきっかけの一つになるだろう。     (賀)