明治21年、美浜町三尾のカナダ移民の先駆者、工野儀兵衛氏が太平洋を渡ってからことしで125年。この夏、全国に住む儀兵衛氏のひ孫やその子どもら23人がまとまってカナダを訪問することになり、そのうちの5人が18日、偉大な先祖のルーツをたどって三尾を訪れた。三尾の儀兵衛氏の生家には現在、儀兵衛氏の孫に当たる工野實さん(86)が住んでおり、カナダで暮らす實さんの弟、敏雄さんあてのビデオレターを収録するなどした。
 儀兵衛氏は幕末の嘉永7年、日高郡三尾浦(現美浜町三尾)に生まれ、明治21年9月、34歳でカナダへ移民。ブリティッシュコロンビア州のスティブストンというまちのフレザー河でサケの大群を見つけ、「フレザー河にサケが湧く」と三尾から弟や親類をカナダに呼び寄せた。その後も毎年のように、三尾から多くの人が儀兵衛氏をたよって海を渡り、儀兵衛氏は「カナダ移民の父」としてその功績が両国で語り継がれている。
 今回、カナダを訪問することになったのは、儀兵衛氏のひ孫4人と、その子どもや孫ら。大阪、兵庫、名古屋、神奈川などから総勢23人の親類がそろって、8月13日からスティブストンを訪ねる。18日には儀兵衛氏の孫(故高井雪子さん)の孫にあたる大石真由美さん(45)=名古屋市=と真由美さんの二女美香子さん(8)、儀兵衛氏の孫の二女白石萬里さん(67)=寝屋川市=、白石さんの長男純也さん(42)、二男拓也さん(41)の5人が、アメリカ村カナダ資料館館長西浜久計氏(86)の案内で儀兵衛氏の生家や日の岬パーク内の同資料館を訪れた。
 儀兵衛氏の生家には現在の当主、實さんが住んでおり、純也さんらはスティブストンで暮らす實さんの弟敏雄さんらにあてたメッセージビデオを収録。その後、5人で移民資料館を見学し、西浜館長からカナダ移民の歴史、儀兵衛氏の功績などについて話を聞いた。
 儀兵衛氏の子孫の中にも、いまでは儀兵衛氏のことをよく知らない人もおり、萬里さんの弟の高井利夫さん(64)が家系図づくりを進めるうち、「それなら一度、みんなそろってカナダへ行こう」と盛り上がったという。萬里さんは「儀兵衛さんのことは孫にあたる母からいろいろ聞いていましたが、私はカナダへ行ったことがありません。以前、弟の利夫がスティブストンの工野ガーデンに桜の木100本を寄贈したことがあります。今回はその工野ガーデンを見たり、儀兵衛さんゆかりの人たちに会ってお話を聞きたいと思います」と話している。