先月末に和歌山市東部地域で、梅などの果実に被害をもたらすウメ輪紋ウイルスに感染した梅の木4本が県内で初めて確認された。その後の調査でも新たに8本が発見され、現在では6園地(5農家)から12本の梅の木が陽性となっている。いまのところ拡大を防ぐには伐採するよりほかに手立てがなく、みなべ町や印南町などの主産地まで広まることになると、大きな被害が懸念されている。
 ウメ輪紋ウイルスが全国で初めて見つかったのは平成21年、東京都青梅市。以後、同市周辺の関東地方で拡大していたが、近年になって近畿でも確認され、昨年には大阪府泉佐野市でも発見された。最初は「当地方は大丈夫だろう」という感覚だっただろうが、いまとなってはそうはいかない。日高地方でもそこまで足音が聞こえてきた状況だ。
 県も梅の木などの移動を制限する「ウメ輪紋ウイルスの侵入及びまん延の防止に関する条例」をことし3月に制定するなど対策に乗り出しているが、このまま拡大が続くようだと梅産地が崩壊する恐れもある。東京都青梅市では多くの梅の木が伐採されたにも関わらず、確認から4年経過した現在でも終息宣言は出されていない状況だ。被害が出てからでは対策がさらに難しくなる。関係者が英知を結集し取り組んでいかなければ、取り返しのつかない事態になることも考えられる。
 遠く離れた場所で被害があっても自分の場所には及ばないということの例えで「対岸の火事」ということわざがある。しかし、いまとなってはそんな悠長なことは言っていられない。被害を食い止める「火事場の馬鹿力」が必要だ。(雄)