日高川の瀧川さんが75歳で大学院卒業
 75歳の日高川町坂野川の農業、 瀧川泰彦さんが和歌山大学大学院の経済学研究科経済学専攻の修士課程を修了、 見事学位を取得した。 同大学院では専門的な知識を深めようと一般サラリーマンや元議員らが在籍することもあるが、 75歳はこれまでで最高齢だという。 瀧川さんは2年間で14科目、 32単位を取得し、 しかもオールAという抜群の成績で、 「学んだことを農業の発展に生かしたい」 と話している。
 瀧川さんは、 勤めていた企業の定年を機に平成12年に大阪市から日高川町にIターン。 大自然の中で農業を営み、 第二の人生を満喫している。 来町者にさまざまな体験型観光を提供しているゆめ倶楽部21のメンバーとして活躍するとともに、 15年には米作り塾を開講。 昨年まで9年間で70人に米作りの楽しさと田舎暮らしの良さを伝え、 これまで31人が町内など日高地方に移住。 地域農業の発展にも貢献している。
 そんな暮らしの中、 耕作放棄地や若い農業者の不足など課題を痛感した。 農業のあり方を考えたい、 深刻な中山間地農業の再生と自立への方向性を導き出したいとの思いから専門的な知識を身につけようと73歳で大学院挑戦を決意。見事1発で合格した。農業の傍ら、大学院では初年度に白浜町の熊野サテライト、2年目は和歌山市の本学で受講。毎週3、4回程度通い、農業経済学特殊問題、社会・経済と企業の統計分析など経済学研究科開設の12科目、専門研究2科目について学んだ。修士論文は「中山間地農業の再生と自立(Iターン移住、和歌山日高川町米作り塾事例研究)」がテーマ。学んだことやこれまでの経験を基に、 戦後の農業の軌跡をたどり農業の課題など分析。 都市と農村の交流、 事例研究など紹介した上で、戦後の農業者の後を担う団塊世代と若者世代が競い合って効果の出そうな農業展望を導き出したいとつづり、 若者が仕事が休みの週末だけ農業をやる 「週末起農 (きのう)」など提言している。瀧川さんは学位取得に、「本当にうれしい。農業を取り巻くさまざまな難しい課題の解決の糸口になれば。勉強したことをお世話になっている地域に生かし、恩返しできれば」と話している。