「奥山にもみじ踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき」。古今集の歌である。シカの肉を「モミジ」という。ちなみに馬肉は「サクラ」、イノシシの肉は「ボタン」。花に例えているのだが、由来は諸説あり、見た目や花札などから。モミジについては歌が由来という説もあり、奥ゆかしさ、わびさびを感じる。
 日高地方ではシカの生息数の増加や生息区域の拡大により、農作物被害が多発している。そんな中、シカ肉のおいしい食べ方を研究、開発することで家庭での消費拡大につなげようと24日、シカ肉料理のイベントが行われ、主婦ら約100人がモミジ肉に親しんだ。会場には生研グループ会員らが考案、調理したシカ肉料理がずらりと並び、試食会で一同舌鼓。筆者も取材の傍ら、味わいたい気持ちになっていたところ、日高川町の会員が餃子に巻き寿司、ソーセージなど十品ほど盛り合わせて持ってきてくれて感激。早速、うまいうまいと食べていたところ、カレーやシチューまでもいただき、心ゆくまで堪能した。これまでも何度か口にしたが、あらためておいしさを再認識。筆者も含めて、参加者全員が料理もバリエーションに富み、家庭でも簡単に調理、子どもからお年寄りまでおいしく味わえる食材と感じたに違いない。
 シカ肉は、牛肉や豚肉と比べカロリーは3分の1、脂肪分は15分の1で、コレステロールも少ないながら高たんぱくなヘルシー食材。美容にも健康にもいいという。ただ、普及へは「硬い」、「臭い」などのマイナスイメージをどう払拭(ふっしょく)するかが問題だが、何はともあれ、イメージほど硬さも臭みもなく違和感も感じないので、一度、モミジ料理を味わってみてください。  (昌)