これまで防災の講演を数多く聴いてきたが、講師先生の話に共通するのが、いざというとき公的機関の助け、いわゆる「公助」はあてにできないので、自分の命は自分で守る「自助」、隣近所など住民同士で助け合う「共助」が大切だ、ということだ。地震や津波が発生して命を助けてくれるのは、自分自身であり、また近所の人でしかない。阪神大震災でも倒壊家屋の下敷きになった人を助けたのは、近所の人たちがほとんどだった。災害発生時、そして直後は確かに自助、共助が最重要だが、時間の経過とともに被災者の生活をきめ細かくサポートする公助が重要になってくる。
 東日本大震災の混乱の中で、避難所では食物アレルギーを持つ被災者への対応がうまく行き届かなかったところがあると報道されていた。小麦にアレルギーがある少女は、避難所に届けられるパンを「これしか食べるものがない」と無理に食べたところ、全身に皮膚炎の症状が出た。アレルギー対応食品、アレルギー用粉ミルクの備蓄は、阪神大震災や新潟県中越沖地震でも問題にされたが、全国の自治体ではそれほど進んでいないのが現状という。
 被災地から発信される報道には、われわれには思いもつかない大切な情報が詰まっている。そして、思いもよらないことに対応しなければならないのが地方自治体の役目。アレルギーだけでなく、視覚や聴覚障害者のサポートなど考えなければならないことはたくさんある。南海地震が懸念される日高地方の行政にとって課題は山積だ。それを一つ一つ検証しクリアしていくことが、大震災に備えるということ。生き残った人を助けるのが公助の力だ。     (片)