20年ほど前にアユの友釣りにはまっていた時期がある。仕事が休みの日には必ず川に行き、竿を出していた。家族からは「そこまで釣りに行かなくても」と冷笑され、夏になると年甲斐もなく真っ黒に日焼けした。しかし、最近ではめっきり川に足を運ばなくなった。理由は持病の腰痛のせいもあるが、ある年からアユの病気の冷水病が流行し始め、釣果が低迷したことが大きい。そういう年が数年続いたのがきっかけでアユ釣りから遠ざかっている。
 アユ釣りから離れているのは筆者だけではないらしい。県内の有名河川の日高川や日置川でも釣り客が減少しているそうだ。一昔前は川に大勢の太公望が並び、釣り場を確保するのが困難なほどだった。しかし近年ではアユ釣りを始める若者が少なく、高齢化しているという。アユ釣りだけでなく、川で遊ぶ子どもたちの姿も見かけなくなったような気がする。
 龍神村に住んでいる知人は「昔は大きなアユがたくさんいたが、最近は小さなアユばかりになった。川が変わってしまった」と嘆く。昔から伝わるアユ釣りに魅力がなくなったとは考えにくく、川そのものに魅力がなくなったといえる。それが釣りの楽しさや醍醐味を少なくさせ、釣り客の減少につながっているのではなかろうか。
 そんな中でも南部川では稚アユの天然そ上が増え始めているという。5年前の特別採捕量は5㌔だったが、年々増加傾向が続き、ことしは300㌔と急増した。同河川は川幅が狭く、もともと友釣り客が少ない川だが、自然が復活することが河辺に人のにぎわいを取り戻していくのだろう。  (雄)