交通事故で脳死と判定された10代前半の少年の臓器が、5人の患者に移植された。提供者の両親は、金色と銀色の折り鶴をコーディネーターに手渡して移植を行う病院に届けてほしいと依頼し、折り鶴は臓器を入れた容器につけて運ばれたという報道が目についた。事故で息子を亡くした深い悲しみの中であっても、手術の無事成功を祈る心遣いに胸を打った。脳死を受け入れ、臓器提供に承諾するだけでも大変なパワーを使われただろうに、他人のために鶴を折られた気持ちはきっと移植を受けた患者の心に届いたことだろう。命の重みをあらためて感じさせられた。
 東日本大震災から、あっという間に1カ月がたった。被災地でも他人を思いやり、互いに助け合っている姿が報道から知ることが出来る。仮設住宅に入居した老夫婦はテレビのインタビューで、「明るい被災者でいようと思う」と笑顔で答えていたのが印象的だった。窮地に追いやられても前に進んでいこうとする姿は、周りの人を元気にするし、遠く離れたわれわれも逆に元気づけられた。
 被災地に入って少しでも手助けしたいが、仕事や生活があってなかなか行動に移せないと、もどかしい思いをしている人もたくさんいることだろう。直接的な支援はもちろん必要だが、そうでなくてもわれわれにできること、それは命の重みをかみしめ、他人を思いやる気持ちを忘れず、明るく元気に生きることではないだろうか。暗い顔をしていれば周りも浮かないし、元気を出せば人を勇気づけることができる。人の気持ちは他人に伝染するものだ。他人への気遣いも忘れない、冒頭の臓器提供者のご両親を見習いたい。       (片)