今から99年前の1912年4月15日、当時世界最大クラスだった豪華客船の沈没事故が発生した。1997年の映画でも有名になった、タイタニックである。ギリシャ神話の巨神タイタンにちなんで名付けられている◆4月14日深夜に氷山と衝突し、2時間40分後の翌15日未明に沈没。乗客、乗員合わせ1500人以上の犠牲者を出した。双眼鏡の収納ロッカーの鍵を持った船員が下船してしまっていて引き継ぎがなされず、周辺の監視を肉眼で行わざるを得なかったことも悲劇につながったとされる。更に映画で描写されていたように、この船には定員分の救命ボートが備えられていなかったことが、悲劇を決定的なものとした。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に、この事故の犠牲者を思わせる人物が登場することは有名だ◆タイタニックの名のもとになったタイタンとは、大地の女神ガイアの息子。揺るぎない大地の上で暮らす安心感、日常を早く取り戻したいとの願いと裏腹に、絶え間なくといっていいほどひんぱんに続く余震の報道が、まだまだ非日常の時間の中にいるのだとの自覚を余儀なくされる。福島第一原発事故の深刻な影響といい、いまだかつてない状況が日本を取り巻いている◆建造当時、タイタニックは「不沈船」とうたわれていた。考えられなかった事態が現実のこととなることも、実際にはままある。こういう時にこそ枝葉末節的なこと、形式的なことにとらわれず、問題の本質を見きわめてそれに対応する必要がある。物事の勘どころをつかむ感覚が重要となってくる。極限状況の中で自分にとって真に価値あるものを見いだすことが、映画「タイタニック」では重要なテーマとされていた。 (里)

