ドローンでの農薬散布の様子。レンゲの種まきは収穫後の田んぼで行う

 世界農業遺産に認定された「みなべ・田辺の梅システム」を守るため、梅の受粉を担うニホンミツバチの蜜源を増やそうと、みなべ町内でドローンの農薬散布請負を行っている梅侍(うめざむらい)防除組合=山内=が、収穫後の田んぼにドローンでレンゲの種をまく取り組みをスタートさせた。レンゲを増やすことでニホンミツバチの生態系や昔ながらの田園風景を守ることにもつなげる。

 梅侍防除組合はみなべ町で農業を営む有志7人が2021年に結成。梅作業に忙しい農家や高齢の農家の負担軽減のため、ドローンを使った稲の消毒作業を請け負っている。


 みなべ町では梅と稲作を並行して行う農家も多いが、兼業の難しさで水田を梅畑にするケースも増えている。肥料や消毒薬の価格高騰もそれに拍車をかけており、組合の中本憲明事務局長(54)は「日本一の梅の産地としては喜ばしいことかもしれないが、古き良き田んぼの風景が失われるのはさみしい」と嘆く。そこで組合では、レンゲが持つ肥料の役割に注目。蜜源を増やすだけでなく農家の肥料代負担軽減にもなればと、ドローンでの種まき事業を考案した。


 事業はみなべ・田辺世界農業遺産推進協議会が助成する住民提案型地域活動支援事業の支援を受け、モニターに無償で種まきを行う。モニターは町内の農家でやってみたいと思う人を募集。ドローンでの種まきができる田んぼがある、レンゲを咲かせたあと組合の映像撮影に協力できる、レンゲの生育を促すため田んぼの水を抜く「中干し」が可能――の3つが条件となる。広さは1件あたりおよそ10㌃程度。今年度はまず町内15件程度の農家に協力モニターを募集し、将来は町内全域、田辺市内にも活動を広げていきたい考え。


 レンゲが増えることでニホンミツバチと梅の共存だけでなく、稲刈り後田んぼにすき込んだわらから発生するガスの抑制にもなり、循環型農業の推進にも一役買う。組合ではレンゲ栽培を継続していくため、レンゲ米やレンゲハチミツといったコラボ作物も展開したいと考えているという。髙田行洋会長(60)は「環境保全に重きを置いた農業の発展に取り組んでいきたい。みんなが誇りを持ち、若い人も農業がかっこいいなと思ってくれるようになれば」と話している。


 モニターの募集は今月末まで。応募多数の場合は抽選となる。問い合わせは中本事務局長℡090―4854―6829まで。