お盆に直撃した台風7号。日高地方に甚大な被害をもたらすことはなかったが、4年ぶりの行動制限のない夏、行楽の楽しみが奪われたり、首を長くして開催が待たれた行事が中止されるなど影響があった。

 隣の県の徳島では、台風が接近していた14日、徳島市に高齢者避難勧告も発令されていた中で阿波おどりが開催された。市としても開催中止の要請をしたそうだが、主催である実行委員会は開催を決行。主催者の対応には多くの批判の声があがっている。

 その背景には4年ぶりの本格開催で巻き返しを図ろうとした主催者側の思惑があったといわれている。事業費は数年赤字が続いており、今年はその起爆剤として、有料演舞場に1万5000円のVIP席、そして1人20万円の限定プレミアム桟敷席を設置。20万円の席は訪日外国人が主なターゲットで、その思惑ははまり、多くの外国人が購入したという。

 実行委員側としては、もし中止とした場合、有料席の返金などで大赤字となるから中止は何としてでも避けたかったのだろう。だが、大規模な交通規制をして公道や公有地を使用している一大行事だからこそ、市や県ともきちんと協議をしたうえで態度決定するべきだったのではと思う。累積赤字やテコ入れなど一連の流れを踏まえると、主催者側の〝どうしても開催したい〟という勝手な欲求を優先させたようにしか思えない。

 行政とも十分に協議する体制をつくり、責任の所在を明らかにしなければ、大規模行事開催の理解や信頼を得ることは難しい。主催者も参加者も見物客も、純粋に楽しめる行事にするには、土台である運営体制を見直さなければならないと思わされた。(鞘)