特に好きな花の一つに、サルスベリがある。この季節、街のそこかしこで明るいピンクの花を咲かせる。母の実家の裏にサルスベリの大木があり、夏休みに泊まりに行くといつもその花が迎えてくれた。母はこの花を見ると、終戦の日を思い出すという。玉音放送のあと、見上げた空を背に燃えるように咲いていたそうだ◆8月15日という日付は、78年という歳月を経ても今なお多くの人に特別なものと位置づけられている。今はその記憶について直接聞いた世代が、次の世代へ伝えられるようしっかりと心に刻み直さねばならない、重要な時期である◆もう一つの夏の花であるひまわりは、ウクライナへの支援のシンボルとなっている。ウクライナの国花であり、美しい2色の国旗のように、青空とよく実った麦畑とともに青空と咲き誇るひまわり畑の写真をよく目にした◆昨年2月24日のロシア軍による軍事侵攻から1年半が過ぎようとし、ニュースの中で占める割合は小さくなっている。しかし日々世界で起こるさまざまな事件の向こうで、今も毎日のように子どもを含む民間人が、暮らしを支えるインフラ施設が攻撃を受け続けている。衆人環視の中でそんな状況が続いているのに、誰もどうすることもできないと思うと理不尽さに歯がみする思いだ◆最近の経済紙で、コマツ、日建などの日本企業から地雷撤去の機材提供などウクライナを支援する動きが相次いでいると報じられていた。物心両面で、寄り添い続ける動きを途切れさせてはならない。「諦め」や「慣れ」に空気を支配させてはいけない◆78年前の歴史から真摯に学び、それをいまの平和構築へ生かすにはどうすればいいか、知恵の結集が求められる。(里)