梅や桜の木の幹を食害する特定外来生物クビアカツヤカミキリの被害が県内で拡大している。4年前の2019年11月、かつらぎ町で初めて確認されて以来、今年5月末時点での被害樹の累計は1604本に達した。被害は紀北地方から南下。5月には梅の主産地近くの御坊市でも初めて被害が確認され、中紀や紀南地方の農業関係者らが警戒感を強めている。

 全国的には2012年に愛知県で被害が初確認、その後、各地に広がった。桜、梅、スモモ、桃などバラ科の植物が食害され、木に産みつけられた卵からかえった幼虫が木の中を食い荒らし、場合によっては枯死させる。1匹のメスが平均約350個の卵を産み、主だった天敵がなく爆発的に増えている可能性がある。


 県によると、被害樹の発生本数は19年度が15本、20年度が180本、21年度が346本、22年度が1003本と急増。今年度は5月末現在ですでに60本が確認された。


 当初はかつらぎ町だけだったが、20年度には橋本市、紀の川市、岩出市に拡大。21年度には九度山町、和歌山市にも広がった。今年5月には中紀地方では初めてとなる御坊市で見つかり、5月に8本、6月に3本の計11本の被害本数となった。


 紀の川市では特産の桃で被害を受け、90本が栽培されているスモモ園の3分の1に当たる30本が被害を受けたケースもある。対策としては見回りや被害樹の伐採だが、増殖のスピードに追いつかない状態だという。


 このまま被害が広がり、みなべ町や印南町、田辺市など梅の主産地にまで拡大すると、経済的に大きな損失が発生する恐れがあり、農業関係者らは「クビアカツヤカミキリはどこから飛来してくるかも分からず、山の中に生えているバラ科の木を一本一本確認して回るのは不可能に近く、対策が難しい。被害が広がらないことを祈るだけ」と懸念している。