農家の平野さん㊨、援農者の松岡さん(中央)らと談笑する山下さん(右から2人目)

 梅の収穫期もいよいよ終盤。みなべ町などの産地では作業の人手不足が問題となっているが、県外から住み込みで働く若い援農者も多く訪れている。同町清川で人手不足に悩む農家と援農者をマッチングする会社「アグリナジカン」は、約50軒の梅農家に66人の援農者を紹介し、その数は年々増加。課題解決への一助となっている。

 アグリナジカンは京都府和束町から清川に移住した山下丈太さん(41)が、農業の人手不足解決に取り組むため2020年5月に立ち上げた。ウェブサイトに農家を掲載して全国から援農者を募り、同年は農家3軒に7人、21年は15軒に25人、22年は28軒に53人を紹介。スタートから3年、口コミで評判が広まり、現在はみなべ町だけでなく、御坊市や印南町、日高川町の農家からも依頼がある。サイトにも500人を超える援農希望者が登録し、移住につながるケースも出てきている。


 山下さんがマッチングするうえで大切にしているのが、援農者がなぜ農業に取り組みたいか、その背景や動機を掘り起こすこと。紹介では必ず山下さんが同席して面談を行う。その人の想いを農家に伝えることで、援農者が単なる労働力として見られることがなくなり、生き方を応援する関係性が築けるという。


 みなべ町広野にある平野農園の平野圭寿代さん(50)は、アグリナジカンのウェブサイトを利用し、広島県から来た松岡麻依子さん(36)を1カ月間住み込みで受け入れている。平野さんは「山下さんの紹介で良い人材をつなげてくれたのでありがたい」、松岡さんも「長年会社勤めで、自然豊かな場所で健康的な仕事をしたいと援農を始めました。平野さんもとても良い方で自分に合っているなと思います」と話す。


 山下さんは今後、援農者が仕事に専念できるよう、快適な住環境を提供したいと考えており、「長く援農を続けるには生活に必要最低限のものが大切になってきます。特に自炊のための道具や調味料なども揃えて、〝また帰ってきたい〟と満足してもらえるような環境を整備したい」と話している。