東京新宿の時計店に仮面をかぶった男3人組が白昼に押し入り、店員を脅したうえ、バールのようなものでガラスケースを次々とたたき割り、高級品を100点以上盗んで逃走した。まるで映画のワンシーンを観ているようで、とても日本で起こっているような犯罪とは思えなかった。通りがかりの人たちはさまざまな角度からスマホで犯行の一部始終を撮影し、乗り込んで急発進する車のナンバープレートも鮮明に映っている動画がテレビ等で放映された。いつどこで何を標的にされるか分からない怖さと、撮影されてもお構いなしの犯行に得体の知れない恐怖を感じたのは筆者だけではないだろう。

 以前、警察の番記者を経験した。20年ほど前は、無人の事業所を狙った金庫破り、空き巣、家人が寝静まっている間に家に侵入して金品を持ち去る忍び込みといわれる窃盗事件などが御坊署管内でも頻発。毎日のように現場取材をしたが、犯行は人目に付きにくいようやるものというイメージしかなかった。全国的にも犯罪が多かった当時でも新宿のような大胆な犯行は稀だった。今回の事件で捕まったのは高校生を含む16歳から19歳の男だった。

 何者かに指示されての犯行と推察されるが、昨年から首都圏を中心に頻発する強盗は、家人を死亡させる強盗殺人にまで発展している。ネットを介して集まった実行犯グループは指示役に弱みを握られ、脅されて犯行に及ぶケースもあると聞く。特殊詐欺グループのような形態で、犯行が強盗に移っているようにも感じられる。一昔前とはまるで違う犯罪が田舎でも起こらないとは言い切れない。ネット犯罪の一端とも言え、対策は急務だ。(片)

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