オオタニワタリの生育状況を確認する区民ら

 20年ほど前、観葉植物用に乱獲されたことなどで絶滅状態にあったみなべ町、南部湾に浮かぶ鹿島のオオタニワタリが、地域住民の地道な植栽活動で復活している。

 オオタニワタリは伊豆諸島、紀伊半島、九州南西部、南西諸島などに分布するシダ植物。葉は茎から放射状に広がり、長さ1㍍にもなる。冬季に冷涼な場所では生育や繁殖の速度が遅く、近年は山林の減少や園芸目的の採集で減少を続け、環境省レッドデータブックで絶滅危惧種に指定されている。

 鹿島でもかつては多くの自生が見られたが、バブル期に高値で取引されたことから乱獲され、台風による塩害などでほとんどなくなってしまった。地元の埴田区では15年ほど前から、当時区長をしていた谷本吉弘さんらがオオタニワタリを復活させようと立ち上がり、植栽活動がスタート。希少種であるため株がなかなか手に入らなかったが、御坊、印南、田辺、上富田など近隣市町の一般家庭で育てている人たちに協力を呼びかけて提供を受けてきた。昨年も約40株を植栽し、現在、鹿島本殿への参道沿いには植えるスペースがほとんどないほど群生。このため、今年は株の植栽を行わず、今月3日には区役員や自主防災会メンバーら20人が鹿島を訪れ、株の様子を確認するとともに落ち葉の除去などで周辺をきれいにした。

 中川義太郎区長(58)は「順調に育っているようで、今では200株ぐらいあるのではないでしょうか。自然に増えていくと思います。今後も様子を見ながら保護に努めていきたい」と話していた。

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