「10年に1度の大寒波」が日本列島を覆った今月25日朝、南国和歌山県の当地方平野部でも常ならぬ銀世界が出現。交通などに影響が出た◆雪景色を目にすると読み返してみたくなる一冊がある。天保8年(1837)に江戸で出版された「北越雪譜」。北越、現新潟県魚沼地方在住の鈴木牧之が雪国の日常や言い伝えについて、熱い郷土愛を込めて語り尽くしたベストセラー本だ。◆冒頭部分で「初雪を風流と喜ぶなど、暖国の人がうらやましい」という意味のことを述べ、本文では人を飲み込む雪崩、吹雪のすさまじさ、雪で流れがふさがれることによって起こる「雪中の洪水」など自然の脅威が克明に描き出される。その一方、巨大な滝の氷柱(つらら)の壮観、雪を固めて作った舞台で行われる「雪中の芝居」の楽しさなど、雪国ならではの素晴らしい景観や風習が生き生きと紹介され、その筆致には熱がこもる◆こんな子どもの遊びも紹介される。雪で高い壁をつくり、塀をめぐらし、天神様を祭る所や煮炊きする所をもすべて雪でこしらえ、食事もつくって終日遊ぶ。遊びあきると思うさま暴れ、雪の家をどんどん壊していくのもまた楽しい。男の子は雪の城を造り、とり合って遊ぶ面白さに我を忘れるという。大量の雪があればこそ可能な遊びで、うらやましくも思える。著者も「童(わらべ)の頃はこの遊びで大将をした」と懐かしげに書いている◆「暖国の雪は一尺(約30㌢)以下だから、銀世界といって楽しめる」と著者は書いている。当地方の今回の積雪も1尺には満たないが、非日常であるがゆえの用心が必要なことは言うまでもない。どんな境遇にも難点と美点があること、日頃からの「備え」の心が大切なことを学ばせてくれる一冊である。(里)