石が積まれた方形周溝墓を説明する川崎さん

 美浜町吉原地内の吉原遺跡で、弥生時代中期から古墳時代初めの墓に石が積まれた「方形周溝墓」が県内で初めて出土し、17日に現地説明会が開かれた。


 吉原遺跡は日高川河口右岸に形成された砂丘上に立地する弥生時代から江戸時代にかけての墓地で、これまでの調査で弥生時代から古墳時代初頭の方形周溝墓、火葬墓などが検出されている。今回は新浜集会場南約200㍍、県道の拡幅工事事業に伴う発掘調査で、これまでにない発見があった。


 方形周溝墓は、墓の周りに溝を四角(方形)に掘って造られた墓。これまでと違うのは、周りの溝に石が積まれていたこと。葺石(ふきいし)を施した方形周溝墓は山陰地方などの日本海側、近畿では兵庫県播磨地方などに見られるが、和歌山、大阪、奈良では今回が初めての発見となった。


 見つかった葺石方形周溝墓は一辺8・9㍍、溝の幅1・2~1・7㍍、深さ約30㌢。調査区画が狭いため、西側を中心に全体の約3分の1を検出したことになるという。周溝内からは10~20㌢の礫が多量に出土している。遺物などから、弥生時代終わりごろから古墳時代初頭の方形周溝墓とみられる。


 現地説明会には地元住民ら約30人が参加。県文化財センター埋蔵文化財課の川崎雅史さんは、「残存状況が良好で、構築当初の姿がうかがえる。山陰地方や近畿北部との交流があったと考えられる。当地域の墓制や地域間交流を考えるうえで貴重な発見」と説明した。御坊市から参加した男性は「弥生時代から遠くの地域の人と交流があったことが印象に残った。海を渡ってきたのでしょうが、弥生人は航海術に長け、フットワークが軽かったんでしょうね」と古代のロマンに思いをはせていた。