コロナ禍でリモートワークやフレックスタイム制が進んだことが影響してか、若者の間で「挨拶不要論」が起こっているそうだ。ある若者は上司に挨拶をして「声が小さい」と言われたことがトラウマとなり、挨拶を自分からしない、相手からされなくても何も思わないようになったという。SNSでは「新入社員にあいさつしたら、〝友達でもないのにあいさつをなぜするのですか?〟と真顔で言われた」と困惑する投稿も。挨拶はもはや〝強要されるもの〟と思われる時代になってしまったのか。

 子供のころはよく大人から「挨拶をきちんとしなさい」と教えられた。性格が積極的でも消極的でも、挨拶さえすれば「ちゃんとしている」と思ってくれるし、強面の人でも挨拶を返してくれたら安心する。挨拶は一言発して軽く会釈をするだけで、その人の印象を上げてくれる実にコストパフォーマンスのいい行動なのでは。

 今は小学校でも、防犯上の観点から「知らない人には挨拶しないように」と教えられているところもあるそうだが、自分の身を守るためだからこそ挨拶は必要だと思う。挨拶をすることで自分は相手にとって無害な存在だと知らせることができるし、逆に挨拶をしないことで〝相手が嫌がることをしても大丈夫だ〟と感じてしまうのではないか。それは仕事をする上でも同じ。挨拶をしてくれる人に対しては何かあったときに助けたいと思うが、挨拶をしてくれない人には助けたいとは思わないのが人間の性だ。

 今の若者たちが中高年になったとき、一体どんな社会になっているのだろうか。少し不安になってしまった。(鞘)