NHK大河ドラマで最初に好きになったのが、幕末を描いた「獅子の時代」。ダウンタウン・ファイティング・ブギウギ・バンドとN響の演奏するテーマ曲に心を奪われ、最終回で流れた楽曲「Our Histоry Again~時の彼方に~」に胸を熱くした◆今月24日、ダウンタウン・ブギウギ・バンド時代の大ヒット曲「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」で幕を開けた宇崎竜童御坊公演を取材した。御年76歳とは思えないパワフルな歌声、ギターをかき鳴らす腕の鋭く激しい動き。2時間の濃密な時間に、40年前の胸の熱さをよみがえらせた◆中盤で、戦火のベトナムを逃れて船で日本へ来た少女の作文を朗読。「戦争というたった2文字に負けてたまるかと、父と弟が眠る南シナ海に向かって叫びたい」。この作文に心を動かされ作った「YO―SORO」を熱唱した。うたう前に、宇崎さんは自身の父が船乗りだったと話し、「僕らは同じ時代という船に乗り合わせた乗務員だと思ってます」と言った。新型コロナと戦火が収まらない現在の世界が頭に浮かび、目頭が熱くなった。この歌のあと、宇崎さんの妻で作詞家の阿木燿子さんがウクライナ侵攻を受けて作った「RIⅤER・2022」が、強く響く声と激しいアクションで歌われた。宇崎さんはウクライナへの募金活動として「竜童ピック」を制作。売り上げを全額寄付するという◆川の流れは、個人の力が及ばない巨大な時代の流れを表すのかも知れない。その大きな流れに、一人一人が自分なりの石を投げ込むことで少しでも変化を与えることができるのだろうか◆「獅子の時代」最終回を思い出した。自由を求めて戦う主人公の菅原文太が刀を手に走る映像に、宇崎さんの力強い歌声が重なっていた。(里)