全国的に産科医の減少が大きな問題となっている。医大生の多くが産科医になりたがらないからで、その原因は当直や深夜の緊急呼び出しが多いなどの過酷な労働環境と、それに見合わない低い対価などがあるという。出産予定の時間が定まらないのは普通なので、やはり対価について一層の改善が必要なのかもしれない。

 県内でも産科医の減少は深刻で、有田市民病院や新宮市立医療センターでは産科医不足で分娩を停止せざるを得ない状況になった。そして、日高地方の産科も減少し、将来的には同じ問題を抱えている。以前は分娩ができる病院や診療所が4カ所あったが、現在はひだか病院のみとなっている。

 県では全国から産科医のリクルートや、県立医科大学に支援講座をつくって医者を集めて県内の病院に派遣する体制の構築を進めたため、有田市民病院や新宮市立医療センターでの分娩は再開できているが、根本的には産科医をもっと養成していくことが重要。このため、県では県立医科大学医学部入学選抜の2023年度募集分から、特別枠を設置する。産科に限定した募集枠は3人程度、産科、小児科、精神科を含めた募集枠は2人程度、計5人程度の定員で、いずれも全国から募集して修学資金(返還免除付き)を交付し、卒業後は9年間、県内の公的病院での勤務を義務付ける。9年経てば県外に出ていく可能性もあるが、これを毎年繰り返せば県内での産科医を一定数、確保できる。

 少子化対策、若者定住、子育て支援などでさまざまな施策が行われているが、それを実現するために一番肝心なのは子どもを安心、安全に産むための環境整備。医大生の頑張り、そして行政の手厚い支援にも期待したい。(吉)