少し前、広島の原爆資料館を訪れ、見学後に公園内を歩いていると、高校生ぐらいの女の子に声をかけられた。語り部のボランティアグループの1人で、時間があれば案内させてほしいという。

 思いがけない申し出を受け、「それはありがたい」とお願いした。死没者慰霊碑、原爆ドーム、平和の鐘などを回り、2カ所ほど「?」となるところもあったが、平和を願う彼らの説明は、「伝えたい」という気持ちが感じられた。

 広島出身(生まれは東京)の岸田首相は26日、平和記念公園を訪れ、米国の駐日大使と並んで慰霊碑に献花を行った。核兵器のない世界の実現へ連携する姿勢をアピールし、核をちらつかせてウクライナを蹂躙するロシアを非難した。

 原爆資料館の展示は戦争の恐ろしさが胸に迫る一方、非核への取り組みを紹介するコーナーでは、国連の安全保障の常任理事国すべてが核兵器国であることの違和感、その機能の不条理さに怒りがこみ上げた。

 岸田首相らが広島に入る前日、プーチン氏が「日本は歴史教科書でアメリカが虐殺行為を行ったと説明せず、真実を無視している」と、日本の米国追従を批判した。岸田首相と大使はこの独自の主張をどう聞いただろうか。

 先日、御坊市内の喫茶店で、おばちゃんたちが「うちらも竹やりで突っ込む練習せんなんよ」と笑っていた。話題はもちろんウクライナ。冗談とはいえ、戦争が日常の茶飲み話の口の端に上る現実に、日本人の意識も変わりつつあると感じた。

 過去(日本)の痛みと現在(ウクライナ)の苦しみの上に、日本が直面している危機、守らねばならないもの、政治家と国民がすべきことは? 原爆を含むすべての戦争犠牲者が私たちに問うている。 

(静)