自由は必ずや専制に打ち勝つ――。米国のバイデン大統領が一般教書演説で、ウクライナへの全面支援の姿勢を強調のうえ、声高らかに宣言した。岸田首相も同様、ロシアへの制裁とウクライナ支援を表明した。

 侵略と破壊の暴挙に対し、米国と西側諸国はプーチン大統領を厳しく非難しながらも、力で敵を押し返せない。なぜか。プーチン氏が核のボタンを握っており、軍を投入すれば核戦争に発展する恐れがあるからだ。

 31年前、イラクがクウェートに侵攻した際、米国と西欧・中東の約30カ国からなる多国籍軍がイラクへの空爆を繰り返した。イラクは核兵器を持っておらず、報復の恐れがなかったからである。分かりやすい。

 米ソ冷戦終結後、東欧で民主化を目指す独立国が次々と誕生した。しかしここにきて、米国に代表される法の支配に基づく民主主義国家が独裁者の強権政治国家に押され、じりじりと後退を続けている。

 新たな国に民主主義が根づくには時間がかかる。まずは経済の発展と政治の安定が不可欠だが、世界が不況から抜けきれぬなか、生活が困窮した国民は独裁を求め、軍が政治を抑えつけるファシズムが芽を出す。昭和初期の日本がそうだった。

 国民の自由と人権が守られず、まともな選挙も行われず、独裁者が居座り続ける強権国家の代表格であるロシア。いま、ウクライナへの侵略を止められなければ、世界はロシアと中国がリードする反民主主義(反米)が一気に拡大する。

 プーチン氏は世界中の「まさか」の甘い予測をあざ笑い続けている。経済制裁に対し、核を撃たないとは限らない。ウクライナがなぜこんな目に遭うのか。日本人はこの現実を直視し、自国の防衛を考えねばならない。 

(静)