全国で1位になった梅郷クラブの山本さん

 第60回全国青年農業者会議のプロジェクト発表がリモートで開催され、みなべ梅郷クラブの山本宗一郎さん(34)=清川=が地域活動部門で最優秀となる農林水産大臣賞に選ばれた。「うめ産地を未来につなげる伐採班の活動」をテーマに、梅郷クラブが耕作放棄地の伐採作業や紀州備長炭の原木であるウバメガシの植樹など地域課題の解消に取り組んでいることを紹介。世界農業遺産のみなべ・田辺の梅システムの継承にもつながると注目されている。

 プロジェクト発表は毎年開かれており、山本さんは2020年1月の日高地方4Hクラブ発表大会、続く県大会でも最優秀賞を受賞。2021年の近畿大会に出場を決めていたが新型コロナで1年延期。今年1月にリモートで近畿大会が開かれ、最優秀賞で全国大会出場を決めていた。全国大会もリモートで行われた。

 日本一の梅産地でも、少子高齢化と後継者不足で耕作放棄地は大きな課題の一つ。山本さんは梅郷クラブの一員として2019年度、地元清川の名之内地区で有志が行っていた耕作放棄地の伐採ボランティアをヒントに、クラブとして町内全域で取り組めるのではないかと発案。町内の梅農家にアンケートを行い、回答者の31%が耕作放棄地を抱えている一方、伐採を請け負うグループがあれば利用する意向がある人はわずか18%にとどまっているという現状を把握。伐採を望まない大きな理由に金銭的な理由が目立ったため、梅郷クラブが安く請け負うことで利用者が増えるのではと考え、10㌃当たり4万円で請け負うことにし、町内全戸にチラシを配布した。

 すぐに6カ所の伐採依頼があり、その後も口コミで広がり、今年度もすでに2件請け負った。再生困難な放棄地は「山に戻そう」と、みなべ川森林組合とタイアップしてウバメガシの植樹活動にも取り組むようになった。また、昨年度からは梅の受粉に欠かせないニホンミツバチを増やそうと「蜜源樹の森プロジェクト」にも発展させており、「伐採や植樹は重労働ですが、活動を続けることで梅生産者とのつながりや、若手・新規就農者にも思いをつなげることができると感じた。植樹により、農業と林業が連携し、地域を守っていくことにもつながる」と熱い思いを発表した。

 県内から農林水産大臣賞に選ばれるのは、記録が残る第42回以降で初めて。山本さんは「耕作放棄地は病害虫や鳥獣害の温床になり、将来的に産地そのものを脅かす可能性がある。生産者一人ひとりが放置しない意識を高めるきっかけになればうれしい。梅システム全体への貢献にもつながると思います」と話した。