東京23区から地方への移住者に最大100万円を支給する国、県、市町村共同の地方創生移住支援金事業は、コロナ禍の中、和歌山県でじわりと実績を伸ばしている。連日数百人単位の感染者が出ている東京に比べ、和歌山は感染者数が圧倒的に少なく、安心、安全のイメージが定着しつつあるのが要因。事業初年度の2019年度は2件だったが、コロナが拡大してきた20年度は4件あり、担当課への問い合わせも急増している。

 同事業は東京23区に在住または通勤する人が、東京圏外へ移住し、起業や就業などを行う場合に最大100万円(単身の場合は60万円)の交付金を支給。うち国が2分の1、県が4分の1、移住地の市町村が4分の1を負担。19年度から24年度までの6年間をめどに、地方公共団体が主体となって実施している。

 和歌山県の実績をみると、起業は19年度が印南町と田辺市で各1件、20年度が串本町1件、那智勝浦町2件で、それぞれ飲食店やサテライトオフィスの運営など。就業は19年度が0件、20年度が美浜町の卸売業1件となっている。

 県ではコロナ感染者の早期発見、早期隔離(感染者全員入院)、感染ルートの特定など、保健医療行政の機能を最大限に活用し、都心や大阪などのような感染爆発をくい止めている。全国的に新しい生活様式の中でテレワークやリモートワークも推進され、環境のよい和歌山県での起業や就業が注目、さらに白浜空港の国際化や高速道路の南伸なども、働く場所の条件として評価されているとみられている。

 県労働政策課によると、ふるさと回帰支援センターの2020年セミナー参加者アンケートで移住希望地の第1位が和歌山県となっているとし、「県への移住はまだ大きな数字には表れていないが、問い合わせが結構あり、いまが和歌山に引き込む大きなチャンス」。1件の実績があった印南町企画産業課でも「和歌山全体で魅力を発信していかなければならない」と話している。

 県は今月28日、オンラインでの再就職合同説明会を予定しており、東京のわかやま定住サポートセンターにも案内を出して参加を呼びかけている。