写真=受賞式で喜びの江口助教㊨

 和歌山信愛大学教育学部助教の江口怜(さとし)さん(34)の論文「戦後日本の夜間中学に関する歴史的研究――周縁の義務教育史の視座から」が、第11回東京大学南原繁記念出版賞を受賞した。

 この論文は、貧困や差別などの理由で中学校を卒業できなかった人が通うことができる夜間中学校を対象に、1947年から70年ごろまでの時期を限定し、夜間中学の全国的な成り立ちや変遷をまとめた。現在と違い、かつて夜間中学があった地域は被差別部落、工場地帯などの地域に存在しており、これらの子どもたちが学校に通えない状況であったことがうかがえ、彼らのために教師たちが、いかに苦闘しながら夜間中学をつくりあげていったのかを記録している。

 江口助教は本紙の取材に対して「調べるのには苦労したが、この論文には人間の生きた歴史、教育の大切なものが詰まっているので嬉しい。夜間中学の歴史をもっといろんな人に知ってほしい」と喜びを語った。

 江口助教は2011年神戸大学発達科学部卒業後、東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。東北大学高度教養教育・学生支援機構特任助教を経て、2019年に和歌山信愛大学教育学部助教に就任した。